生成AIで作った文章や画像などのコンテンツは、「依拠性」と「類似性」を根拠として、著作権侵害になる可能性があります。
生成AIの著作権侵害リスクを知らない場合、思わぬ損失を被る可能性があるため、とくに事業を営む方は必ず知っておくべきです。
そこで本記事では、著作権を考える上で重要な「依拠性」と「類似性」、著作権侵害を回避するためのポイントなどを解説しています。生成AI関連の著作権侵害事例も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
生成AIの活用を使って業務を効率化したい方は、本記事を読めば著作権リスクを限りなくゼロにできるようになるでしょう。
企業において、著作権リスクを抑えて生成AIを活用するためには、使用者である社員のAIリテラシーが必要不可欠です。
生成AI導入には組織全体の理解と適切な運用が欠かせません。
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|監修者
(株)SHIFT AI 代表取締役 / GMO他複数社AI顧問 / 生成AI活用普及協会理事 / Microsoft Copilot+ PCのCMに出演 / 国内最大級AI活用コミュニティ(会員5,000人超)を運営。
『日本をAI先進国に』実現の為に活動中。Xアカウントのフォロワー数は9万人超え(2024年9月現在)
生成AIの文章・画像は著作権を侵害するケース
以下の2つの概念が認められた場合、生成AIで作った文章や画像が著作権を侵害していると認められる可能性が高まります。
- 依拠性がある場合
- 類似性がある場合
また、本記事を読む前に、著作物と著作権の定義を確認してください。
著作物は、思想又は感情を創作的に表現したもの。
著作権は、作者が自分の作品の使用、複製、配布、公開などをコントロールできる権利。著作権法によって守られ、著作物の創作と同時に発生する。
参考:著作権法第2条第1項(e-GOV)
本章で「依拠性」と「類似性」について理解しましょう。
依拠性がある場合
生成AIで作ったコンテンツが著作権を侵害する場合「依拠性」の有無がとくに重要な指標として見られます。依拠とは、他人の著作物を認識した上で、自己の作品の中に用いることです。
つまり、ユーザーが既存著作物を認識した上で、それを自分の作品に含めている場合、依拠性が認められる可能性が高くなります。
また、既存著作物が生成AIの学習データに含まれていて、偶然生成したコンテンツに依拠性が認められ、著作権を侵害してしまう場合があるため注意が必要です。
依拠性を直接証明するのは非常に困難であるため、次に紹介する類似性を含め、さまざまな要素を総合的に考慮します。
類似性がある場合
依拠性の他に、他人の著作物と同一、もしくは類似していることを示す「類似性」も重要視されます。
類似性の判断は、コンテンツの表現形式や構成、特徴的な要素などを総合的に考慮して行われます。
たとえば、生成AIが出力した小説のあらすじや登場人物の設定が、既存の著名な小説と酷似している場合、類似性が高いと判断される可能性があります。イラストの場合も、既存著作物の特徴と似ている場合、類似性が認められるケースがあります。
ただし、類似性の判断には注意が必要です。アイデアや事実、一般的な表現方法などは著作権の保護対象外であるため、これらの要素が似ていても必ずしも著作権侵害とはなりません。
重要なのは、表現の創作性や独自性が類似しているかどうかです。
最終的に、類似性と依拠性を考慮して、著作権を侵害しているかどうかが判断されます。AI生成のコンテンツに関して、主に判断基準とされる項目を以下に示します。
- 既存著作物が世の中によく知られている著作物か
- 既存著作物とAI生成物に類似性はあるか
- 少ない試行回数で類似度が高い表現が生成されるか
上記の項目を満たすと、著作権を侵害していると判断される可能性が高くなります。
ただし、依拠性と類似性の判断基準に関しては、明確な基準が存在しません。ケースによって判断基準が異なるため、法律で明確化できないためです。最終的には、人間によって判決が下されます。
生成AIを利用する際は、類似性と依拠性による著作権侵害の可能性が少しでも存在することを念頭に入れておきましょう。
生成AIが偶然著作物を生成した場合は著作権侵害になる?
ある生成AIサービスを使って、偶然既存著作物と同一、または類似したコンテンツが生成された場合でも、ユーザーの行為は著作権侵害に該当する可能性があります。
たとえば、以下のように学習データに既存著作物を利用して、それを知らずにユーザーが類似・同一のコンテンツを出力したケースが考えられます。
現状、ユーザーが既存著作物を認識している・いないに関係なく、上記のケースでも依拠性・類似性が肯定されて著作権侵害になる可能性が高いといわれています。
ただし、今まで裁判で争われたことがないため、判例ができるまでははっきりしないという点にも注意が必要です。
生成AI、とくに画像生成AIを扱う際には、使用するツールの学習データにも気を配る必要があるといえます。
生成AIの利用で著作権を侵害しないための注意点4つ
前述したように、生成AIを使う上で著作権侵害の可能性はゼロにできません。
以下のポイントを意識して、できるだけリスクを軽減することが大切です。
- 使用する生成AIの学習データを把握しておく
- 専門家のチェックを行う
- 著作権侵害の心配がないツールを使用する
- 利用者のAIリテラシーを高める
それぞれのポイントについて、詳しく解説します。
①使用する生成AIの学習データを把握しておく
生成AIが既存著作物を学習している場合、意図せず著作権を侵害してしまう可能性があるため、使用ツールの学習データはできるだけ把握しましょう。
たとえば、特定の画家の作品のみを学習したAIモデルを使用すると、その画家のスタイルに酷似した出力が生成される可能性が高くなります。
オープンソースのAIモデルを使用する場合は、そのモデルの学習データについて詳細な情報が公開されていることが多いです。これらの情報を活用し、学習データの適切性や多様性を評価することが大切です。
学習データを把握することで、生成されるコンテンツの傾向や特徴を予測し、著作権侵害のリスクが高い領域を事前に認識できます。そのうえで、必要に応じて出力結果の修正や補完を行うことで、オリジナリティの高いコンテンツを作成できます。
②専門家のチェックを行う
著作権法は複雑で解釈が難しい場合があるため、専門家の助言を得ることで、潜在的な問題を事前に発見し、適切な対策を講じられるようになります。
専門家のチェックは、とくに以下のような場面で有効です。
場面 | 説明 |
---|---|
商業利用目的のコンテンツ作成時 | 収益に直結する重要なコンテンツの場合、法的リスクを最小限に抑えるために専門家の確認が不可欠 |
新しいAIツール導入時 | 新たに導入するAIツールの使用が著作権法に抵触する可能性がないか、専門家の意見を聞くことを推奨 |
大規模なプロジェクト開始前 | 生成AIを活用した大規模なプロジェクトを開始する前に、全体的な法的リスクを評価するために専門家のチェックが有効 |
著作権が不明確なデータを使用する場合 | 学習データや参照データの著作権状況が不明確な場合、専門家によるリスク評価が重要 |
クライアントワークで生成AIを使用する際 | クライアントのプロジェクトで生成AIを使用する場合、法的責任の所在を明確にするために専門家の助言が必要 |
専門家のアドバイスを受けることで、単に著作権侵害のリスクを回避するだけでなく、生成AIを活用したコンテンツ制作の法的な側面についての理解を深められます。
また、長期的に見て、組織全体の生成AI利用に関するリスク管理能力の向上にもつながるでしょう。
③著作権侵害の心配がないツールを使用する
学習データや生成プロセスにおいて著作権に配慮した設計がなされた生成AIツールを活用することで、著作権侵害のリスクを大幅に低減できます。
ツール名 | 特徴 | 著作権に関する特記事項 |
---|---|---|
Adobe Firefly | 画像生成AIツール | 学習データは著作権の心配がないものだけ。商用利用可能。Adobeのストックフォトやイラストを学習。 |
Vidnoz AI作曲 | 音楽生成AIツール | 用途や商用利用、加工の有無を問わず自由に使用可能。著作権フリーの音源を学習。 |
AIVA | 音楽生成AIツール | 非営利目的の場合は自由に使用可能。著作権切れの音楽を学習。 |
Canva | オンラインデザインツールに搭載されたAI画像生成機能 | Canvaが保有する著作権クリアの素材をもとに学習。商用利用可能。 |
とくにAdobe Fireflyは、万が一ユーザーが著作権侵害になったとしても、Adobe社が損失を補填すると公表しており、著作権に対する徹底した姿勢がみてとれます。
著作権フリーとはいえ高クオリティの画像を生成できるため、画像生成AIを著作権を気にせず使いたい方は、まずAdobe Fireflyを使うとよいでしょう。Adobe Fireflyについては、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:【著作権完全フリー】画像生成AI「Adobe Firefly」の特徴やできることを解説
上記のように透明性の高い企業や開発者が提供するツールを選ぶことで、より安全に生成AIを活用できるようになります。
また、著作権以外にも、商用利用可能な画像生成AIをお探しの方は、以下の記事も参考にしてみてください。
関連記事:商用利用可能な画像生成AI一覧!著作権違反しないためのポイントも解説
④利用者のAIリテラシーを高める
AIの基本的な仕組みや特性を理解し、適切に活用する能力であるAIリテラシーは、著作権を侵害しないためにとくに重要な要素です。
AIリテラシーを高めるためには、以下のような取り組みが効果的です。
AIリテラシー向上の施策 | 内容 | 期待される効果 |
---|---|---|
AI基礎知識の習得 | AIの学習プロセスや生成メカニズムについて学ぶ | 出力結果の特性や限界を把握できる |
著作権法の学習 | 著作権法の基本概念やAIとの関係について学ぶ | AIを使用する際の法的リスクを理解できる |
AIツールの実践的使用 | 異なるプロンプトや設定を試し、出力の違いを観察する | オリジナリティの高い結果を生み出す方法を理解できる |
過去の事例学習 | 成功事例や問題が生じた事例を含めて学ぶ | 実践的な知識を獲得し、潜在的なリスクを認識できる |
AIリテラシーの向上は、個人レベルだけでなく、組織全体で取り組むべき課題です。定期的な研修や勉強会の開催、専門家を招いてのセミナーなどを通じて、組織全体のAIリテラシーを高めることが、安全かつ効果的なAI活用につながります。
弊社SHIFT AIでは、AIリテラシー向上のための無料セミナーを開催しています。
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創作意図と創作的寄与があると生成AIのコンテンツにも著作権が認められる
文化庁によると、生成AIによって作成したコンテンツに、以下に解説する「創作意図」と「創作的寄与」があるかどうかで、著作権の付与が決定するとされています。
項目 | 説明 |
---|---|
創作意図 | 思想又は感情を、ある結果物として表現しようとする意図 |
創作的寄与 | AIが生成したものに対し、思考作度や加筆・修正を行うこと |
とくに、創作的寄与が重要であるとされています。
たとえば以下のケースでは、著作権が認められる可能性が高いです。
- プロンプトを極めて詳細に記述して作成している場合
- 生成・修正・加筆を何度も行っている場合
- 自分のコンテンツを生成AIで出力する場合
一方で、生成AIの設定(パラメーター)を操作するだけでは、著作権は認められにくいとされます。
ビジネスを行う上で、コンテンツの著作権の有無は非常に重要です。生成AIを扱う際には、自社のコンテンツへ著作権が認められるかどうかも重視してみてください。
生成AIと著作権に関するよくある質問
最後に、生成AIと著作権の関係についてよくある質問を2つ用意しました。
- AIの開発・学習で著作権に違反する場合はありますか?
- 生成AIが著作権を侵害した事例はありますか?
質問に対する回答を参考にして、生成AIと著作権について理解を深めてみてください。
AIの開発・学習で著作権に違反する場合はありますか?
AI開発・学習のためにデータを複製・利用することは原則著作権侵害になりません。
根拠となるのは、著作権法第30条の4第2号において、「情報解析」のためである場合は、他人の著作物を無許諾で利用できることが明記されているためです。
二 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。第四十七条の五第一項第二号において同じ。)の用に供する場合
引用:著作権法(e-GOV)
AIの開発・学習は、情報解析にあたります。そのため、無許諾でインターネットやSNSのデータを利用しても著作権違反にはならないのです。
ただし、以下の場合は著作権侵害になる可能性があるため注意が必要です。
第三十条の四 (中略)ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
引用:著作権法(e-GOV)
上記のように、ある程度の制限があるとはいえ、日本では著作権をあまり気にせずデータを使えます。世界から見て日本のAI開発環境は制限が緩く、世界中の開発者から注目されています。
AIの学習・開発における著作権リスクについては、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:AIに使う学習データは著作権を侵害する?最新の著作権法をもとに解説
生成AIが著作権を侵害した事例はありますか?
生成AIが作ったコンテンツが著作権を侵害しているとして訴えられた事例は、主に以下のとおりです。
事例 | 内容 |
---|---|
自分のプログラミングコードが生成AIから出力 | 著作権で保護されているある大学教授のコードが生成AI「GitHub Copilot」によって一部そのまま出力された事例 |
新聞社の記事を学習 | ニューヨークタイムズは、ChatGPTが自社記事を学習し、購読料収入及び広告収入の機会を奪っているとしてOpenAIを訴訟した事例 |
許可されていない音楽・音声を学習 | 音楽生成AI「Suno」と「Udio」に対し、ソニー、ユニバーサル、ワーナーの3社が著作権侵害を理由に訴訟した事例 |
上記のように、AI開発会社が著作権侵害を理由に訴えられる事例は数多くあります。
しかし、個人や企業が生成AIを使用して作成したコンテンツが著作権を侵害して訴訟される事例は、2024年7月時点では存在しません。とはいえ、個人・企業が生成AIを利用する場合でも、著作権には注意すべきです。
生成AIの著作権事例に関しては、以下の記事を参考にしてみてください。
関連記事:生成AIの著作権侵害事例6選!著作権侵害を回避する方法も解説
生成AIを使う際には著作権侵害に注意!
生成AIに関する法律は、まだ完全に整備されているわけではないため、現在は著作権を侵害している文章や画像がSNSやインターネットで出回っている状況です。
企業や個人が生成AIで作ったコンテンツが著作権を侵害したという事例も、2024年7月時点ではありません。
しかし、生成AIを使う場合は「依拠性」と「類似性」に注意しないと著作権を侵害してしまうことは、過去の判例から明らかです。
これまで事例がないからといって、著作権を意識せずに生成AIを使うことはリスクが大きいといえます。
本記事を読んだ方は生成AIと著作権の関係性を意識し、リスクを抑えながら効率化を目指してみてください。
生成AIの活用事例についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
企業において、リスクを抑えて生成AIを活用するためには、個人がAIリテラシーをもっている必要があります。
弊社SHIFT AIでは、AIリテラシー向上をサポートするべく、無料のセミナーを開催しています。
リスクを抑えつつ、生成AIで業務を効率化したいと考えている方は、ぜひ以下のリンクから詳細を確認してみてください。
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